暇だから野田首相の衆議院での施政演説を読んだ。中々の名調子で美辞麗句を連ねているが何故か白々しい。参議院は問責決議された首相の施政演説を拒否した。議会史上前代未聞の事である。参議院は良識の府ではなく政局の府である事を自ら証明した。衆議院のミニコピーのようなものは二重手間だから不要である。参議院が廃止されれば捩れ国会も終わる。
野田演説のキーワードは「明日への責任」である。何回も繰り返した。特例公債法案と選挙制度改革案が通らない事で苛苛した首相が皮肉交じりに明日への責任を説いた。確かに野党が重要法案を人質にとって解散を迫るのは明日への責任の放棄である。
然し野田首相が「明日への責任」を果しているとは言えない。野田さんは消費税増税法案を通した事で決断する政治を強調するが、これには一理ある。消費税アップは誰もが嫌がって先送りしてきた課題であった。財務省の手先と非難されながらも決断した。その結果が小沢一派の離党だった。大飯原発の再稼動も果敢に決断した。TPP参加も表明した。尖閣島の購入も決断した。野田首相は線が細いと見えて案外強かで大胆である。方向性も概ね正しい。
私の本宅の近くに野田首相の住居がある。一般庶民よりお粗末な一戸建てである。ささやかな個人献金で集めた政治資金や歳費を20人の子分を養うのに使ったのだろう。中国の要人に比べて野田首相は遥かに清潔である。松下政経塾で受けた幸之助氏の哲学を実践していると言える。
さはさりながら現下の喫緊の課題は政治を正常な軌道に乗せる事である。民主党が惨敗するから解散を出来る限り先送りする事は「明日への責任」を放棄する事になる。結果は如何あれ近い内に解散すると言う約束を履行して国民の信を問うのが明日への責任である。

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