今回は、あまり気が進まないまま、でも、書くことにした。
何故かというと、不快な出来事への僕の文句だからだ。
だが、事態は、この時点では半ばで、ここからの展開次第で僕の鬱屈した気分は晴れもするのだ。
果たして、創業1912年、資本金2046億7500万円、社員数22000人、売上高2兆7559億4800万円。その売上高で、あのソフトバンクに次いで日本第37位の大企業「シャープ株式会社」は小市民の僕の気分を良くしてくれるのだろうか?
事の発端は、前回のたくらだ堂のラストにも書いたが、僕のブルーレイデッキが壊れたことだ。当然、シャープ製。
先月26日、土曜日、年明けから時々再生が不如意になることがあったのだが、その日は電源さえ入らなくなった。これはマズイと思い、購入したハラ電機(東三国)に電話した。
その時は、「もし、持って帰って直さなければならなくなった場合を想定して、代替品は用意してもらえますか」と言う話をして了解してもらい、同程度のブルーレイデッキを持って、店員さんが来てくれた。
結果、僕のデッキはやはり持って帰る事になり、代替品と入れ替えて貰ったのだが、何故かそれが作動せず。僕としては、「ええ、そうなの?」と思いつつも、「明日また来ます」に従うしかなかった。
そして、翌日、再び取り換え作業が行われ、今度は無事作動。暫くはこのデッキを使用することになった。ただ、これ以来、電波の受信状態が悪く、予約録画したものを再生しても、NHK以外は頻繁に画面にモザイクが入り、音声も途切れ途切れで、折角の番組も見るに不愉快な代物になっているのだ。
――さっき録った、桑田佳祐の『MUSICMAN』も、まだ見てないのだが、心配で仕方が無い。あれにちょっとでもモザイクが入っていようものなら、考えただけでもォ!→やはりモザイクが!全部見ないで消去した!
だが、この代替品の不具合は今回は副産物だ。いや違う、副作用だ。二次災害だ。薬害だ。エイズだ。スモンだ。幸せを返せーっ!
そうそう、今回の問題はハラ電機ではなく、早川電機だ。
その後、ハラ電機は僕のデッキの修理を生産元のシャープに依頼。シャープの社員から電話があり、その言い分は概ね、
「あなたのデッキは本体に設置してあるHDDが壊れており、HDDの交換が必要です。どうやら必要以上の使われ方をされたようです」
社員は田中基幹という。後日貰った名刺には、
SHARP
近畿サービス統轄部
西大阪サービスステーション
シャープサービス協力店
シャープエンジニアリング株式会社
とあった。
早速僕は反論した。
「僕は僕の買ったデッキのHDDの容量の範囲内でしか録画しておらず、特に無茶な扱いはしていない。それなのに、購入してから多分3年ぐらいのはずだけど、もう壊れると言うのは、家電製品の耐用年数としては如何なものでしょう」
――その後に調べたら、僕がそのデッキを購入したのは2008年の8月8日。つまり、故障時点で2年と5カ月だったのだ。故障は絶対早い!
これらはタクシーの中での電話だったが、更に向こうが、
「HDDは常に空き分を多くして使用した方がいいんですが」
つまり、HDDに録画したら早目にダビングし、HDDの残量をいつも多目にしておいた方が良いというのだ。だがそれは取扱説明書には書いてないという。つまり僕も知らないブルーレイデッキの使い方を言って来たのだ。
そうかもしれないが、と僕はこう返した。
「僕は結構録画したままが多く、常に残り30時間ぐらいを目安にダビングして、残時間を調整してましたが、それもデッキの能力内の事だし、それで使い方が悪いと言われるのはおかしい」
――因みに、僕のデッキは購入当時シャープ製品の中では一番高額な機器で、下世話だが25万円。そして、肝腎の録画時間はハイビジョン画質(DR)で約90時間。ハイビジョン画質の最長(5倍)で438時間。更に、ハイビジョンではないが最も長時間録画は1403時間にもなる。
――そして何と言っても!問題は、僕が痛いのはここだ!
「HDDに録画されているものは取り出せないでしょう」
――ええっ!まだ、ダビングしてないモノがいっぱいあったよ!あれもあれも!
――しかもだ!ハラ電機とはこれで2回目だ!以前、このブルーレイデッキを購入した時に、店員(今回と同じ)さんのミスで、それ以前のハイビジョンデッキに録画していた50本近くの番組が消えてしまった。僕はそれらは大事な資料だし、財産だからと弁償を迫ったが、その後に買った掃除機を1万円負けてくれただけだった!ハラ電機の仕打ちは許せない!ま、いつまでもそんな店で買っている僕もアホなのだが。
今回録画されていたものを思い出して見た。50本は超えていた。
「紅白歌合戦」2本
「オリンピック」1本
「映画」5本
「芝居」4本
「明石家電視台」2本
「ダウンタウンDX」6本
「2011年R−1」
「IPPONグランプリ」
「ドキュメンタリー(戦争、犯罪、障害者など)」10本
「ドキュメンタリー(自然、紀行)」5本
「お笑い(笑神降臨、M−1関係、漫才マンなど)」6本
「音楽(ジョンレノン、グラミー賞など)」3本
「ドキュメンタリー(人物・ダリなど)」2本
などだ!
――特に、Natureドキュメンタリー「HOME」は、最初見た時は途中からだったが、その画面の美しさ〜実はそれが地球の傷であり、腐敗であるのだが〜に思わずRECを押したのだった。それが2009年のいつだったか。その後、その英語ナレーションバージョンのものは手に入ったのだが、やはりあの時の日本語のものをと、全く縁(よすが)の無いまま、また放送があることを願っていた今年!「HOME」は再び僕の前に現れたのだった!勿論、心待ちにして撮った!
それが消える。次のチャンスはあるのだろうかと言う思いだ!いや、どうしてくれるんだ!
しかし、僕も大人だ。61歳だ。駄々をこねても戻らないモノは戻らない。
「判りました。それらが消えることは仕方が無いでしょう。しかし、工場へ持って行くなりして、検査、解体、そして修理の時に、元に戻るように最大の努力をして下さい。世界のシャープの技術に期待しています」
向こうも、「判りました」と言った。勿論、僕は泣く泣くだ。それがあの田中さんに通じただろうか。
そして、「今回は、本来ならHDDを新しいものに交換すると5、6万円掛かるのですが、無料にさせて頂きます」とはしてくれた。それは有難いが、それが僕の望む形ではない。ま、仕方が無いのだろう・・・・
タクシー内の電話はそれで終わった。
その後、田中氏から電話があり、工場で修理する前に「同意書」を書いてくれと言って来た。
この先、これ以上のトラブルにならないように、転ばぬ先の杖、後のケンカを先にしておくという奴だ。企業としては当然のことだ。
――だが、まだその取り交わしはしていない。何がどう書いてあるのだろう。それによっては僕はそれなりの要求をしようと思っている。だが!
そして7日、田中氏が「同意書」を持って、態々僕の家まで来てくれた。
これに印鑑をと言って出された「同意書」を僕は結構丹念に読んだ。全部で800文字ぐらいであろうか、ああした文書特有の判りにくい文章である。
中身要約
@シャープエンジニアリング株式会社(以下当社)は必要に応じ修理依頼品のデータ等にアクセスしますが、データ等をバックアップすることはありません。
A修理の際、データ等を初期化することがあり、それによってデータ等は全て消去されますので、修理前にお客様がバックアップをしておいて下さい。
B(全文)修理中にデータ等が失われる場合があります。データ等の消失が当社の故意または過失により生じた場合を除き、それにより生じた損害につき当社は責任を負いかねますので予めご了承ください。尚、当社の過失による場合であっても当社が賠償する損害はデータ等の消失により、お客様に生じた通常の損害に限り、特別の損害は含まないものとします。
C(全文)修理後、万一何らかの理由によりデータ等が記憶(記録)されなかったことによる損失につきましては、当該損失が当社の故意または過失により生じた場合を除き、当社は責任を負いかねますのでご了承ください。尚、当社の過失による場合であっても、当社が賠償する損害はデータ等が記憶(記録)されなかったことにより、お客様に生じた通常の損害に限り、特別の損害は含まないものとします。
D(全文)テレビ番組やその他のメディアからお客様が録画収集されたデータ等を当社にてバックアップすることは、著作権法上お受けすることはできません。
E(再生部品の使用に関して)
F交換した部品はお客様から特段のお申し出がない限り当社の保有とさせていただきますが、回収した部品に含まれるデータ等は直ちに初期化します。
――如何か?一回読んだくらいでは判りかねるものだ。
で、何度も目を通した揚句、今回の僕の場合になぞらえてみると、上記は結局、HDDの録画情報が残っていて、取り出せる場合に限られており、今回の僕の場合は、現時点では恐らくだが、HDD事態が損傷・破滅しており、シャープエンジニアリング(株)が言うデータ等は取り出せない状態にあるので、実は同意事態に意味は無くなっているのだが、これに署名しないと、会社として修理・解体に入れないというので署名することにした訳である。
すると、田中氏が、僕が最後まで努力して録画したものを取り出せるならその努力をして欲しいと言ったことに対し、同意書に署名してしまうと取り出せるものも取り出せなくなるので、会社がその可能性を探って、取り出せるかどうか判明するまで署名は止めておきましょう、と提言して来て、僕もそれに従った。
つまり、この日は同意書の署名に至らなかったのである。
――この時、同意書のDとの関連で、少しややこしいのだが、元より会社はその著作権法によりデータ等の取り出しは出来ないのだが、取り出せる可能性が出て来た時に、僕自身、或いは僕の知人など誰かの力でそれが可能な場合を示唆して来たのだ。勿論、その可能性も僅かでしかないのだが。
そういう事態の中、この日、僕が田中氏に伝えた最も重要な事は・・・・
――やはり疲れる。もう何度も中断しながらここまで書いたが、気の進まない事、事態が不愉快なことを書くには違うエネルギーが要る。でも、書かないと気が済まないこともあって、書く。しかも、僕は昨日、腎臓結石が発覚したところなのだ。気分は鬱――
――さて、最も重要な事は、
「録画したものの復活は殆ど諦めています。しかし、僕が一番悔しいのは、それが無くなることです。見たくて取っておいて見られなくなるものもあるし、この先何度も見るつもりのものもある。中には市販される可能性のあるもの、既に市販されているものなどもありますが、この先決してそうならないものもある。しかも、趣味で録ったモノはひとつもない。仕事の結果であり、今後の資料であり、僕の知識や人生の糧でもある。とても残念だ。それらが50本以上。30分のドキュメントもあれば、3時間の音楽番組もある。もし、それらをお金に換算するなら、市販されている色んなDVDとの兼ね合いと、僕の場合の特殊性、個別性、希少性から1本8〜9千円として、ざっと40万円。例え、法律上僕の希望を叶えられなくても、僕のそうした精神的苦悩への賠償は考えられないのだろうか。確かに、今回、本来5、6万円掛かるHDD交換代を無料にするという配慮は頂いたが、僕としては、ならばそちらはちゃんと払うので、確たる賠償をしてもらうことは出来ないだろうか。これは、貴社が、録画されたものの個人的価値をどう考えているかということへの問でもあるのです」
――何だか、ゲンキンで、品の無いことを言ってるように取られるかもしれないが、大切なものを無くされた悔しさを判って欲しいのと、それが戻ってこないなら、少しでもこちらの気が晴れるように何らかの方法を取ってくれるのかという執拗な思いである。
犯罪や事故で子どもや家族を無くした人々や、公害などで命や健康を奪われた人々が、それらはもう戻ってこないが、せめて相手の良心を問うために裁判に持ち込み、損害賠償を求める、あれだ。現実にそうした闘争をやっておられる方には一緒にするなと怒られそうだが、そして規模や切実性は違うが、同じだ。その気持ちをシャープが判るか、である!
そして、その数日後の今日、3月9日、先ず田中氏から電話があった。
●田中氏「賠償に関しては、取扱説明書に書いてあって、やはり当社としては出来ないんです。では、同意書の件、お願いします」
■僕「なるほど、門前払いということですね」
●田中氏「はい、そうです」
■僕「え、門前払いをそうですって、あんたが言ったらだめでしょう!」
●田中氏「あ、すいません」
――などと言う一幕もあった。僕も思わず語気を荒くしたが、田中氏は実は20歳後半であろう。ニキビ顔で茶髪の青年である。致し方無いか。
結局、夜になって、同意書への署名を急ぐ彼が再び僕の家にやって来て、先ずは、賠償が出来ない事を書いている「取扱説明書」のコピーを出した。僕は既に読んでいたので、「はい、判ってます」と言って、納得できないまま署名をしたのであった。
因みに、トリセツのそれは、以下の質問状の(三)の※印の文章である。
――だが、僕の思いはまだシャープに届いてないと思った僕は「質問状」なるものを用意して、田中氏に渡した。
その質問状とは、
−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−
質問状
シャープ株式会社 様
2011年3月9日
これは、今回のいきさつについて、私自身の納得を少しでも深める為にするもので、質問状などと厳めしいタイトルを付けましたが、これによって更にことを荒立てようなどというものではありません。今回の製品を作った側として、一消費者の私の質問に素直に答えていただければ、それで結構です。
質問一
「購入後2年半で壊れた事に対して、製造者としてはどんなお気持ちでしょう?」
質問二
「新製品は、録画時間がより長くなった事をひとつの特徴、売りとして謳いますが。今回、HDDには録画を溜めないで出来るだけ早くダビングした方がいいという事を教えられました。では、録画時間は長くなくてもいいのではありませんか?どうお考えでしょう?」
質問三
「取扱説明書の使用上の御注意に、(※万一何らかの原因で本機が故障し、データが消失した場合、または不具合により録画・録音されなかった場合の録画・録音内容の補償については、御容赦ください)とあり、更に(お客さままたは第三者がこの製品の使用誤り、使用中に生じた故障、その他の不具合またはこの製品の使用によって受けられた損害については、法令上賠償責任が認められる場合を除き、当社は一切その責任を負いません。あらかじめご了承ください)ともありますが、消失したことによる、落胆、怒りといった私の心の問題への補償(ケア)についてはどうお考えでしょう。
また、法令上賠償責任が求められる場合とはどういう場合でしょう?
以上。
ここまでの経緯の中で、私は、HDDに録画されていた五〇本近くの番組――私にとっては仕事上の貴重な資料――についてはその復元はもう諦めています。今、私は、とても残念で悔しい思いをしています。向後は、それでも「シャープから買って良かった」と少しでも思いたいというのが、百歩譲った私の気持ちです。その気持ちにどう答えて頂くか、真摯な回答をお待ちしております。
長川原 繁
−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−
僕の前で神妙にそれを読んでいた彼は、一読して、「これは、上司に渡せばいいんですよね」と言った。勿論なので、何なら社長に渡して欲しいくらいなので、僕は「はい」と言った。
――だから、事の顛末は決まっていない。僕の質問状にシャープの誰がどんな答えを言ってくれるのか。無くしたモノは戻らないが、せめて救いのある答えであってほしい。
では、最後にそんなシャープの社訓である。
シャープのホームページを開いたら、社訓ではなくこれがあった。
【経営理念】
いたずらに規模のみを追わず、
誠意と独自の技術を持って、
広く世界の文化と福祉の向上に貢献する。
会社に働く人々の能力開発と
生活福祉の向上に努め、
会社の発展と一人一人の
幸せとの一致をはかる。
株主、取引先をはじめ、
全ての協力者との相互繁栄を期す。
あれえ?
シャープ、会社のことしか考えてない!
僕たち消費者の事は?
それ無しでは会社が成立しないのに!
ま、相手は企業だ。当然か。仕方ないか。
つまり、これは期待できないぞ。
でも、「世界の文化」をどう認識しているかだ。
僕の仕事、一お笑い作家の糧である録画されたものを何と考えて頂けるかである。
或いは、「全ての協力者」の中に、一消費者である僕は入れて頂けるのかである。つまり、一企業として消費者を味方と思っているかどうかである。
そしたら、まだこんなのがあった。
【シャープグループ企業行動憲章】なるものが同じホームページに載っていて、その中に、こんな項目、
≪お客様の満足向上≫
○人や地球のために、今までにない可能性を提供することを常にめざし、新しい生活スタイルを生みだす独創的な商品やサービスを創出し、提供することにより、社会の発展に寄与します。
○お客様の信頼獲得と満足向上のために、お客様のニーズと要望に応え、かつ、安全性、品質、信頼性、環境に配慮したより良い商品、サービスを提供します。
ま、こうしたものによく見られるフレーズはあるものの、では「お客様の満足向上」と「ニーズと要望に応え」てくれたなら、今回の問題はあっと言う間に解消するのだ!
シャープに期待してみるか!
吉永さんも、良いって言ってるし。
※田中氏とのやりとりに関して、その日時に勘違いはあるかもしれませんし、僕の言い分についても、この文章を起こす際により理解を求めて、彼と交わした会話以上の事を書き加えた部分もあること、そして彼の言葉にしても、彼が発言したそのままではなく、僕の理解と彼の心積りとは齟齬があるかもしれないことをお断りしておきます。
あ、現在、私、かわら長介、三日前に発病、発覚した腎臓結石と闘ってます。大したことはありませんが、早く石が下りるべく薬とジャンプで対処しております。結石になる確たる原因は不明だそうで、これを防ぐには食事療法が重要だそうです。水分を十分に摂取し、動物性タンパク質の過剰摂取を控え、結石を予防するマグネシウムや食物繊維の多い野菜類、海草類を摂取すること。
結石は水分の補給がなく、尿が濃縮される夜間に出来やすいため、夕食を早めにとり、食べ過ぎないように気をつけて、夕食後に水分を十分摂取することが大切なのだそうだ。
皆様の健康をお祈りしております。
そして、5月7日土曜日!
『コント衛門・3』をやります!
会場は再び、弁天町「世界館」!
がんばるぞ!

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