これまでにもその類の事は何度もあったのだが、僕の関ってる番組でまたそんなことが起きた。
本番でのタレントさんのトークの内容をそのタレントさんへの直接の聞き取りを元に詰めている段階で、スタッフからの僕宛のメールの中に「タレントさんが‘石井館長に似てると言われた’と言っているのですが、石井館長(という言葉)が使えるかどうか、検討中です」
一瞬にしてそのメールに怒った僕は、返信メールにこう書き足した。
〜タレント・H(実際はここは実名)の‘石井館長’発言。これがどうしてダメなのか納得行かない!ある種の犯罪を犯した人だから?詳しくは知らないが、係争中だとしても、似てる人として名前が挙がっただけだ。彼の行状に言及したわけでもない。どのスタッフのどういう意見、思いかわからぬが、そいつの説明を聞きたい!ただ、雰囲気で恐れているだけとしか思えない!彼が犯罪者だと言うなら、研ナオコさんも、コロッケも、美川憲一さんもそうだった。鈴木宗男が出演した時はそいつはどういう立場で得心したのだ!更に言おう、犯罪者がだめと言うなら、蘇我入鹿も、平将門も、源義経も、大塩平八郎も、岸信介も時の犯罪者だ。どうする気だ?〜
本番当日、スタッフにこの件について問うと、「石井館長が行方不明で」と言う。まだ判っていない。僕は毎度の事であることも含め、それ以上言う気を持続できなかった。更に新事実、実はそのタレント自身が「これ使えますかね?」と言ったのだった。
軽い、腰砕け。溜息ばかりである。
ところで、その番組名を明らかにしないのは、そうした状況に不満、同時に憂えているわけで、番組自体を訴えたいわけではないからだ。しかも、こんなことは殆どのバラエティ番組で存在する事で・・・問題はそこなのだ。タレントHについても同じこと。ただ、そういう事態にどう対処するか、どういう態度で望むかが僕自身も問われているのだ。
ともかくお笑い番組をやってる皆さん、先ずは森達也の「放送禁止歌」(単行本=解放出版、文庫=光文社、DVD)を読むか、見ることだ。
しかし、このように嘗ては外からばかりだった言葉狩りは、今や内からもあるのである。弱者、障害者、皇室、右翼、解放同盟、企業、政治家・・・これらの、微妙で、重大で、興味津々で、いつでも極めて今日的な事柄を、報道は、或は真面目なドラマは扱っていいが、お笑いはダメ!この国の文化の限度を知らされる思いだ。
しかし、報道やその手のドラマが何も気にせずに、何の警戒や懸念や配慮も無く自由にやらしてもらえるわけではない。ところがだ、そこを乾坤一擲、見事に突破できるのがお笑いではないのか!
かなり、乱暴に言い切ったが、そんなコントを嘗て書いた。今は無き(亡きではなく)非常階段のライブ用に書いて、僕も出演した。タイトルは「ハンティング ワールド」
〜テレビを見ていて、ニュースでも、バラエティでも、ドラマでも、CMでも、不都合、不適当、不穏当な発言だと思ったら、即座にテレビ局に電話して、そのお詫びの謝礼で食っている家族の物語だ。実際のお金はピー(ここはコント上もダメ発言のように、役者がピーと言った)同盟が出しており、更に、彼らの仕事はねずみ講システムで、今日も、娘の友達を勧誘する父と娘なのであった〜
この原稿の為に読み直してみたが、結構直截で、出来のいい作品とは言い難かった。しかも、当日、あまり受けていた記憶が無い。
堪らず、天国のミヤコに合掌。
2006・11・12未明

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