
中国バスが運行する豪華高速バス「
ドリームスリーパー」。
かつて広島と横浜を結ぶ路線が運行されていましたが、今年4月より車両と路線ともどもリニューアルが行われ、広島と東京を結ぶ路線に生まれ変わりました。
同時に使用車両もヒュンダイのユニバースから三菱ふそうのエアロクイーンに更新され、先代の車両と同じく座席が全て個室空間に収められています。
・・バス車両では希少な個室空間。以前から興味は持っており、この度予算と行程の都合が付いたことから、7月2日の広島発便に乗車してきましたので、その様子をご紹介したいと思います!
新たなドリームスリーパー号は、広島側が中筋駅、東京側が大崎駅西口と、今までの広島東京間を結ぶバスとしては珍しい発着点となっています。
せっかくの豪華装備のバスということなので、今回は始発から終点まで乗り通すべく、中筋駅から大崎駅西口までを予約しました。
心待ちにしていた乗車日を迎え、出発前に予約サイトで空席状況を見てみるとこんな感じ。
灰色になっているのが4A席で、私が確保した座席。しかしそれ以外全てのチェックボックスが残っており、つまりは空席の状況。
乗客が自分一人の見込みのまま、中筋駅へ移動しました。

▲コンパクトな乗降スペースの中筋駅バスターミナル。中国バスの車庫からも近く、長時間の待機が困難な為か、発車3分前にバスが到着しました。
真っ白な車体によく目立つ「DREAM SLEEPER」のロゴ。期待に胸を膨らませ、車内に入ります!

車内は全てカーペット敷きで、公式サイトにも記載がある通り土足禁止。代わりにステップ部分が言わば「玄関」となっています。
乗車時は乗務員の方よりビニール袋が配布され、その中に靴を入れて車内個室に持ち込みます。
・・ちなみに予約サイトのキャプチャの通り、中筋駅発地点では私一人の予約とだからか個室の扉が開けられており、分かりやすく配慮されていました。
発車後は担当乗務員の方が個室まで来られ、対面での挨拶と車内設備の案内が行われます。
様々な業界で接客対応が重要視されると聞くこの頃。ドリームスリーパーの乗務員はは特に細やかな接客指導が行われているのか、体勢を低くしての対応、手際の良い説明など、車両のみならず接客面でも従来の高速バスとの違いを感じました。
中筋駅発車後、広島市内ではバスセンターと新幹線口での乗車扱いを行い、広島高速の府中ICから広島高速、山陽道へ進入します。

▲見慣れたバスセンターと新幹線口の景色。個室のドリームスリーパー車中から眺めると、心なしか特別に見えてきます。
途中、福山西ICで山陽道を降りて・・

▲日付が変わる頃、福山市内でも乗車扱いを行います。
最後の乗車扱いを行う広尾バス停を出ると、福山東ICより再び山陽道に入り、東京都内まで長い高速道ドライブが始まります。
さて、今回の出発は7月2日日曜日の晩ということで、交通機関の混雑が比較的少ない閑散期の利用です。
冒頭にシートマップを掲載しましたが、広尾バス停まで乗客は居ない状況。この時点で、利用便の乗客が私一人ということで確定したのでした。まさに貸切状態・・(笑
福山市内を出て約一時間、吉備SAで開放休憩が行われます。
ドリームスリーパー号は上下便とも休憩は一回のみ。この日は泊まり勤務明けで仮眠を経ての乗車ということで、軽食を購入して車内で食べたのでした。全個室ですので、夜間時間帯でも食事にあまり気を遣わず済むのがいい点です。

▲改めて、今回お世話になったのは中国バスのF1704号車、広島200か22-64のナンバーを付けた三菱ふそうエアロクイーン。近頃の夜行バスにしては珍しい、スーパーハイデッカー車です。
吉備SAを出発後は、引き続き夜間走行。
本来は寝るための時間ではありますが、せっかくの個室車両。深夜時間帯でも窓カーテンを全開にし、流れゆく夜景を眺め、時には少し眠りつつ、車中での時間を過ごしたのでした。これまた一般的な夜行バスでは出来ない事ですね(^^
この辺りで、車中の設備をご紹介。
公式サイトでも機能を含めて紹介されていますが、個人的に感じた事も記事に載せたいと思います。

▲座席周り。背もたれやレッグレストがかなり大きいです。安全面では乗用車と同じ、三点式シートベルトまで採用されています。
背もたれ類を最大まで倒すと「ゼログラビティ姿勢」なる、背もたれだけでなく座面も深く沈み込む体勢になります。
私が経験した限りでは、JRバス系列で採用されている「クレイドルシート」をさらにゆったりさせた印象。
一方、唯一気になったのが頭周り。

画像の通り枕付き(けっこう柔らかい素材)で、左右が立ち上がる構造とはありますが、恐らく数センチの立ち上がり。背もたれ周辺も平坦な形状です。
自動車ですので寝台列車のように真横にはなれず、やはり車特有の左右方向の体勢の変化も大きく感じます。
車の座席で眠ると頭が傾くこともありますが、その時に枕からはみ出ると支える部分が無くなり、頭(特に首?)が安定しないのです。このため目覚めた後は首回りがちょっと疲れる感覚。
この点は前に例を出した「クレイドルシート」のように出っ張った形状が理想だな・・と思いました。実際に乗車する時はエア枕があると快適かも。

▲足元はこんな様子。床上に置かれているのは車内用スリッパです。これは備え付け品なので持ち帰り不可。
バスでよく見かけるフットレストはありませんが、元々が土足禁止のカーペット敷きなのと、体操座りのような姿勢を取る時もレッグレストが水平まで跳ね上がるので、何ら困る事はありません。
続いて、肘掛け周りの付帯設備。

▲背もたれ類は全て電動で、レッグレスト・座面・背もたれを単独で調整するスイッチと、全て一括で調整するスイッチが装備されています。
前後に見える回転式のスイッチは、室内の照明用。

スポットライトが頭上に取り付けられており、無段階の調整が可能です。

車両標準の読書灯も備え付けられており、こちらも使用可能。画像右上に見えるのは、もう一つの回転式スイッチで調節できる間接照明です。

▲小型の空気清浄機も備え付けられています。

▲前方の壁には、大型のテーブルも。飲食やパソコン利用にもゆとりのある大きさです。

▲足元にはコンセント差込口とBGMが流れるイヤホンジャックの他、小物を置ける棚も用意されています。棚の中に見える赤色のモノは、非常時の窓割り用ハンマー。安全面でも格段の配慮がなされています。

▲個室と通路の仕切りはこんな感じ。上部にあるのは曇りガラスですので、通路の照明が入り込む構造です。もっとも夜行バスですので、照明が点灯しているのは、乗降扱いを行う市街地での走行時と開放休憩時ぐらい。

▲照明が埋め込まれている頭上には荷物棚も設置されています。ちょっと小ぶりには見えますが、意外と奥行きがあるので、一般的なカバンやリュックサック程度なら問題無く置くことが出来ます。
私も肩掛けカバン2個を車内に持ち込んだのですが、すんなり入ってくれたので安心。

▲車内設置のパンフレット類。

▲乗車時には専用パッケージのミネラルウォーターが用意されており、使い切りの洗面用具等も用意されています。写っているのは貸出ヘッドホン用のカバー、マスク、アイマスク、歯ブラシ、耳栓、ウェットタオル。
ウェットタオルは大きめですので、手拭き用だけでなく寝起きに顔や体を軽く拭く、という用途にも使えます。
続いては共用部分の様子です。

▲車内中央にトイレが設置されています。空間自体は一般的ですが、洗浄機能付き便座で、洗浄水も浄化機能が付いているようです。

▲車両最後部には洗面台も。私一人の乗車ということで、トイレを含め終始綺麗に使うことが出来ました(汗
紙コップやペーパータオルが備え付けられているので、洗面用具を持ち込まずとも身だしなみを整えられます。
なお、この真横は単なる壁になっており、客室空間がある訳ではありません。
洗面台の背後はアコーディオンカーテンを挟んで車両前方から続く通路で、万が一の急ブレーキ時は危ないかも・・と思ったのですが、

この通り折りたたみ椅子が設置されています。
気になる車内設備はこのような様子で、通しで乗った感覚だとビジネスホテルやネットカフェの使い勝手をバス車両に持ち込んだような印象でした。
・・引き続きバスは東京に向けて走り、携帯電話のGPSログを見る限り、途中は淡河PA、御在所SA、藤枝PA、海老名SAで休憩を取っていた模様。

▲4:30頃に到着した御在所SAにて。夏場と言う事で、既に周囲に何があるか分かる程度に明るくなっています。
こちらは、恐らく高松から出て来たであろう四国高速バスのエアロエース。高松発の「さぬきエクスプレス名古屋」号でしょうか。

しばらくすると、西鉄バスのエアロクイーンも入ってきました。言うまでも無く、ドリームスリーパー以上に長距離を走る「はかた号」ですね。こちらも一部個室の車両だそうで、気になる存在です(笑

▲7:20頃撮影。富士山の姿も車内から拝めます。

▲9:00前に東名道の東京料金所を通過。つくづくすごい数のレーンです。ここで福山東ICから長らく走行してきた高速道路を流出し、首都高速に入ります。

▲大崎駅まで乗車する私だけの利用ということで、東京側バス停の水道橋には立ち寄らず。そのまま首都高速を走り、目黒ICから一般道に降りた様子です。

▲この半日前は見慣れた広島市内の景色を眺めていましたが、場所は既に東京都内。山手線や埼京線を走る車両が視界に入ってきました。
そして、乗車から約12時間20分。広島市内から約800kmを無事に走り抜け・・

▲終点の大崎駅西口バスターミナルに到着しました!名残り惜しくも、半日お世話になった車中を後にしたのでした。
改めて、片道約12時間、運賃23,500円のドリームスリーパー号。新幹線片道のグリーン車利用と同じぐらいの運賃設定です。
バスとしてはかなりお高く感じますが、新幹線普通車利用+宿泊費用を考えると、行程次第では時間を有効に使え、かといって手が出ない程のお値段でも無いのでは?と思います。
趣味的に見ても、バスでは珍しい全個室仕様。
深夜時間帯でも遠慮なしにカーテン全開で車窓風景を楽しむ、思う存分リクライニングしても後ろの迷惑にならないなど、移動を楽しむ点においてもこれだけの運賃を払う価値があると思います。
ここ数年は鉄道や船舶でも、移動時間を楽しむべく、豪華装備や飲食設備を整えた車両が多く生まれている印象があります。
バス好きとしては、ドリームスリーパーをきっかけに、バスの世界でも長距離移動も楽しめたり、より心地良く過ごせたりする路線やサービスが少しずつでも広まれば・・なんて思います。
今回はドリームスリーパー乗車がメインの遠出ではありますが、四日間の行程のうちまだ二日目の朝、広島から東京まで移動したのみの段階です。
この後も都内近辺で過ごし、帰りは大阪市内に立ち寄り環状線の新車乗車や引退の進むエアロキングに乗るなど、趣味を楽しむ行程でしたので、この様子も次の記事で掲載します!