Aちゃんの物語です。
子ども時代。
天真爛漫なふるまいが、子どもらしくて可愛い子でした。
Aちゃんの子ども時代のことを思い出すと、いつも何かが楽しくて笑ってるような顔が浮かびます。
小学生になって、Aちゃんは学校が休みになると、祖父母のいる田舎にひとりで泊まりに行きました。
リュックひとつの初めての一人旅です。
親との葛藤を避けるようにして田舎に行ったのでした。
田舎についた次の日、宅配便で荷物が着きました。
中には、算数の問題が手書きされたノートとボールペンが入っていました。
「遊んでないで、ノートに答えを書きなさい」
母親の無言のメッセージです。
田舎には筆記具がなかった。。。そういういいわけも許されません。
祖父母はノートとボールペンを見るまでもなく、親子の関係がわかっていました。
だからこそ、孫をひとりで来させたのです。
Aちゃんが一人で来る前の夏休みのことでした。
孫を真ん中に川の字で寝たとき、
「Aちゃん、もう寝た?」
大きな声でAちゃんの父親が部屋の戸を開けました。
「どうしてる?」
Aちゃんと父、Aちゃんと母。
一事が万事、そういう感じの関係で育ちました。
祖父母は、Aちゃんの両親に意見を言いながらも、普段の生活を共に出来ないので、Aちゃんを気にかけながら過ごしました。
Aちゃんは高校進学のとき、見事に親の期待を裏切りました。
親が顔をしかめるような友達とつきあいました。
親が警察に呼び出されるようなこともありました。
自分を生きようと、若さにまかせて走ってしまった感じです。
けれども大きく道をはずすことなく高校卒業となり、就職も決まりました。
それを機に「一人暮らしは心もとないので、友達と二人で暮らしたい」と親に申し出ました。
「許さない」
そのひとことで(ケンカもしたようですが)自立の芽は摘まれました。
仕事に行くようになり、Aちゃんは毎晩スナック菓子と水を大量に買い込んで帰り、口にしてはトイレで吐きました。
そのことと、汚れたトイレをめぐって毎晩親子喧嘩が繰り返されました。
隣の住人から苦情が出るほど激しくやりあいました。
その後、成人したAちゃんは泥酔して帰ってくることが多くなりました。
もうずいぶん前、Aちゃんのことを話しながら、
「私は失敗した」
何回も、Aちゃんの母親はそう言いました。
「失敗作」
そう言ってるように聞こえました。
「そんなことない!」
私は、そう強く言いながら、怒りと悲しみでいっぱいでした。

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