『スクールデイズ』
守屋健太郎 (監督)
森山未來 (主演男優)
田辺誠一 (男優)
金井勇太 (男優)
小林且弥 (男優)
忍成修吾 (男優)
2005年制作
2005年公開
☆☆☆

森山未來主演の異色学園コメディー。俳優として出演したTVドラマに人生を翻弄されるイジメられっコ男子高校生の姿をブラックユーモアたっぷりに描く。タイトルの「スクールデイズ」は“School Days”ではなく“School Daze”。
「普通の子供に戻りたい」と8歳で芸能界を引退した(元)天才子役・相沢春生は、今では冴えない高校生活を送っている。そんな彼が、一念発起して受けた国民的学園ドラマ「はみだし!スクール☆デイズ Part 6」のオーディションに見事合格、本名と同じ役名のイジメられっコの役をつかむ。現実の学校生活でもイジメられていた彼は、役にのめり込むあまり次第に現実とドラマの区別がつかなくなってきてしまう…。

実は、DVDパッケージを見て想像していた雰囲気と随分違っていた。「ただただ笑って観ていられるハイパーテンションコメディー」だと思っていたのだが、実際は、学校でのイジメ、崩壊した家庭、等の暗鬱としたシーンが多く、映像も全体的に暗い。そもそも本作を「コメディー」と呼んでいいものかどうかよくわからない。
監督は、これが長編映画監督デビュー作である守屋健太郎。ミュージックビデオクリップやCMの世界で活躍してきた人だそうだ(以前ヒットしたサッポロビールのCM(豊川悦司と山崎努が温泉旅館で卓球してるやつ)を撮ったのは彼じゃないかと思う)。その他のスタッフも映画プロパーではないような人が多数参加しており、普通の映画とはやや毛色を異にする独特の映像世界が構築されている。そういう意味では、監督の持ち味が存分に発揮されているのではないかと思う。

正直に言うと、何を描いた映画なのかよくわからなかった。途中まで「虚構の世界を精神的支柱に据えて過酷な現実に打ち勝つ」という話なのかなと思って観ていたのだが、最終的には「ドラマは所詮ドラマに過ぎない。現実と混同するな。」というメッセージを残して終わっているようにも見える。役にのめり込む春生の性格は崩壊した家庭生活の歪みの表われとも考えられ、家族の再生(そのために大きな代償を払うことになるのだが)を描いた話のようにも見える。「天才子役」と祭り上げ、本人とその家族を狂わせる芸能界の功罪を問うているようにも思える。

監督の経歴を見ていて、彼が「
テレビマンユニオン」に参加していることを知り、少し謎が解けたように思った。テレビマンユニオンには『誰も知らない』(2004年)の是枝裕和も参加しており、考えてみれば本作には、『
ワンダフルライフ』(是枝裕和 監督 1999年)や『
真夜中の弥次さん喜多さん』(宮藤官九郎 監督 2005年 これはテレビマンユニオンとは関係ないが)に感じた「現実と虚構の重なり合う部分に対する自覚的な視線」のようなものが感じられる。物語そのものよりも、監督自身の「虚構」に対するアプローチの仕方を楽しんだ方が面白い映画なのかもしれない。

本作が映画初主演だという森山未來の熱演が見事。奇妙にデフォルメされた役が多い中、中途半端な印象の松尾スズキがどうもダメ(演技が悪いのか、脚本・演出が悪いのかよくわからないが…)。どうでもいいんだけど、鶴見辰吾といとうまい子が、『高校聖夫婦』(1983年)以来22年振り(!)に夫婦役を演じている。昔はお坊ちゃん風だった鶴見辰吾がすっかりオッサンになっていたのが少なからずショックで…。
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「スクールデイズ」公式サイト

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