『イルマーレ』
アレハンドロ・アグレスティ (監督)
キアヌ・リーブス (主演男優)
サンドラ・ブロック (主演女優)
2006年制作
2006年日本公開
☆☆☆

韓流映画『
イルマーレ』(イ・ジョンジェ、チョン・ジヒョン主演、イ・ヒョンスン監督、日本公開2001年)のハリウッド版リメイク。ファンタジー要素を含んだ静かなラブストーリー。キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックの共演は『スピード』(ヤン・デ・ボン監督、日本公開1994年)以来なのだとか。2人とも年取ったなーと思ったけど、キアヌ・リーブスなんて年取ってますますいい味を出すようになってきたと思う。
ハリウッド版のオリジナルタイトルは『The Lake House』。韓流版のオリジナルタイトルも『時越愛』(「シウォレ」と読む)で、邦題だけがどちらも『イルマーレ』ってのが面白い。この映画では湖上の家(韓流版では海辺の家)が重要な舞台装置なのだけど、韓流版ではこの家につけられた名前が「Il Mare」(イタリア語で「海」)。ソウルには、『時越愛』の主演男優イ・ジョンジェの経営によるイタリア料理店Il Mareがあったのだとか…(今はもうないらしい)。ハリウッド版では2人が時を越えて待ち合わせをするシカゴの超人気レストランのお店の名前が「Il Mare」となっている。シカゴと言えばマフィア、マフィアと言えばシシリー島。あの店はイタリアンレストランという設定だったんだろうか…。
ちなみに、湖上の家vs.海辺の家対決では、僕の中では韓流版の海辺の家の方が好み。ハリウッド版の家は周囲の自然は美しいんだけど、建物自体は割りと無機的な冷たい感じ。韓流版の家は、周囲は殺風景で割りと灰色的なイメージなのだけど、コンクリート打ちっぱなしの建物が何故か逆に柔らかく暖かい印象。

最近、韓流映画ばかり観ていたのだけど、久々にハリウッド映画を観てみて、やっぱり最低限のクォリティーは満たしているよなぁと思った(光文社新書に対して講談社ブルーバックス、といった感じ?)。韓流版よりも、交わされる言葉もよく練られているように思うし、ちょっとしたプロット上の工夫も上手いと思う。韓流版で説明不足のように感じていたところもさりげなく補われていたし、挿入歌の使い方も効果的。
キアヌ・リーブスもサンドラ・ブロックも実際はもう結構な年なんじゃないかと思うけど、20代終わりから30代にかかるくらいの役柄(韓流版では、主人公の2人はおそらく20代半ばという設定)。ずっと逢いたいと思っていた人にやっと逢えると微笑んだ直後にやはり決して逢うことはできないのだと知った瞬間の、サンドラ・ブロックの表情の変化が凄く印象的。まぁ欧米人の表情の作り方って大袈裟だとは思うんだけど、それにしても劇的な変化で。見る見る目の表情が死んでいく。対するキアヌ・リーブスは、キャメロン・ディアスと共演している『フィーリング・ミネソタ』なんかもそうなんだけど、こういう格好良くない男をやらせると天下一品だよなぁと思う。
ただ…、韓流版を愛する者として、本作を鑑賞中ずっとある種の違和感を感じていた。考えてみると、韓流版とハリウッド版では、描かれているテーマが異なるのだ。

本作で描かれているテーマは本質的には「遠距離恋愛の苦悩」。その距離が「物理的距離」ではなく「時間的距離」だという特殊性はあるけれど。互いを想いやる2人の間にはどうしても縮められない距離がある。逢いたいのに決して逢えない。そういう話。ところが、韓流版のテーマは「片想いの切なさ」だったのだ。男が片想いしている女の視線の先には、彼女が片想いしている別の男がいる。彼女を想っているからこそ、彼を想う彼女の気持ちもよくわかる。彼女の気持ちがわかるから、主人公の男は彼女を自分の方に振り向かせようとするのではなくて、彼女の片想いの手助けをしてやろうとする。そこに片想いの切なさがあったのだ。だから、そういう切なさを期待して本作を観ると、あれ?っと肩透かしを喰らうことになる。2人の遠距離恋愛の話になってしまっているから。
レンタルで借りてきたDVDには英語字幕表示のオプションがあった。アメリカ映画のDVDって普通そういうものなの? 韓流映画のDVDにはあまりハングル字幕がついていないんで…。
→ 「
イルマーレ」(日本語公式サイト)
→ 「
The Lake House」(英語公式サイト)

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