『亀は意外と速く泳ぐ』
三木 聡 (監督)
上野 樹里 (主演女優)
蒼井 優 (女優)
2005年制作
☆☆

謎の映画である。いろいろな映画情報サイトを見ていると、この映画を三木聡監督のデビュー作としているページから、第2作としているページ、第3作としているページまであるのだ。主演の上野樹里も撮影時17歳という記述もあれば、19歳としているページもある。こんなに情報が錯綜している映画って珍しい。
逆にどんなページでも共通しているのは「脱力コメディ」というターム。DVDパッケージ裏の作品紹介に「このゆるさは前代未聞」と書いてあったのだけど、確かに「前代未聞のゆるさ」だと思う。ストーリーを楽しむ映画でもなく、何か発見があるわけでもなく、爆笑できるわけでもない。1時間半苦笑いを続けているとそのうち訳も分からずおかしくなってくる、という、その感じを楽しむしかない映画…(それが狙いらしい)。

監督の三木聡は、もともと劇団系の人で、その後TVのバラエティ番組の制作に携わってきた人。言われてみれば、笑いの雰囲気がお笑い芸人のそれではなく劇団系のそれだと思う。正直僕は、劇団系のノリというものがどうも好きではないので、最初の30分はツラかった。しかも、こんな映画だと知らずに何となく観始めて、「普通であるとは何か」について考えさせる映画なのだろうかとか、普段見過ごしてしまっている日常生活の不思議に気づくことによって世界観が広がるという映画なのだろうかとか、探りながら観ていたので余計ツラかった。途中でこの映画は普通の映画じゃないんだということに気づいてから、ジワジワと面白くなってきた(そしてついに最後までジワジワとしか面白くなかった)。この映画、このジワジワ感を楽しむための映画なのだろう。

主演の上野樹里は、23歳の平凡な主婦という役柄。凄〜く地味な感じで、途中で変なパーマをかけられてしまったときの方が可愛く見えるってのが不思議。共演の蒼井優は不発。彼女は本作で初めて観たのだけど、全くその魅力が引き出されていないのではないかと思う。その他、個性派俳優のオンパレード。
あ、あと、最後のスタッフロールのときにレミオロメンの曲がかかるのが凄く変。世界観全く違うんだもん。こういうのも狙ってるのかな〜。
(2007年12月7日追記: 初めて観たとき、正直あまり楽しめなかったのだけど、後半ジワジワ沸いてきたクスクス感は何とその後半年間も持続した。こういう映画なんだいうことをわかったうえでもう1度観てみると、案外最初からクスクス笑える。蒼井優も完全に不発ってわけではないことに気づいた。今では『
ダメジン』(三木聡 監督 2006年)観てみようかなぁとすら思っている。)
→ 「
『亀は意外と速く泳ぐ』公式サイト」

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