まず、フィールドワークとか全然やらずに思いつきを書いているだけだということを表明しておく。まあメモみたいなもんです。
「おたく」の語源というと例の中森明夫氏のコラムが出てくるわけだが、どうも見落とされてることがあるんじゃないかという気がする。
おぼろな記憶なのだが、知る限りでは少なくとも'70年代の東京のインテリゲンチャな若者の間では、「おたく」という二人称がわりと一般的だったように思うのだ。普段の会話でもそうだったし、たとえば(中森コラム以前の)新井素子作品には頻出する。彼女は平井和正作品の影響だと言っているが。わたし自身は当時、東京郊外の普通の子供だったので、確実に言えるわけではないのだが。
その層から初期のアニメファンが登場したことを考えれば、彼らが「おたく」という二人称を使うことは当たり前である。まさにその層に属する中森氏がことさらに取り上げたのも、かつての自分に対する嫌悪感があったという仮説も立てられる。今の彼自身が例のコラムについて触れられたくないように。まあこれは仮説だ。
「オタク族は二次元の世界に没入しているから他人と距離を置きたくて迂遠な二人称をわざわざ使うのだ」という言説も、この前提から見ると怪しくなってくる。東京の言葉を知らない誰かが、現象面から理屈をこじつけて、それがたまたま収まりがいいのでマスコミの中で定着してしまったという経緯があったのではないか。このへんは思考停止せずに、深く調べてみる価値があると思う。
他人に過干渉しないというのは、'70年代の若者に限らず、都市生活を前提とした東京の文化だった。今やそれも失われて久しいが。

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