「ヴィクトリア」(VICTORIA)
2015年 ドイツ(ブロードメディア・スタジオ) 140分 シネスコ
監督:ゼバスチャン・シッパー 製作:ヤン・ドレスラー/ゼバスチャン・シッパー/アナトール・ニチュケ/アイケ・フレデリク・シュルツ/カテリーヌ・バイコウシス/ダーヴィット・カイッチ 原案:ゼバスチャン・シッパー/オリヴィア・ニーアガート=ホルム/アイケ・フレデリク・シュルツ 撮影:ストゥルラ・ブラント・グロヴレン 音楽:ニルス・フラーム
出演:
ライア・コスタ(ヴィクトリア)/フレデリック・ラウ(ゾンネ)/フランツ・ロゴウスキ(ボクサー)/ブラク・イーギット(ブリンカー)/マックス・マウフ(フース)/アンドレ・M・ヘンニック(アンディ)
上映館:新潟市民映画館シネウインド
採点:★★★★★
映画は映像のカットを積み重ねて構成されているもの、というのは、フィルムという撮影時間に限界のある素材に依存しているからです。昔8o映画を撮っていた時には、1巻3分半という限界を超えて撮影することは不可能でした。35oの映画にしても、10分からせいぜい15分が限界。長回しで有名なあの監督もこの監督も、その限界を超える長回しは不可能でした。
ところがビデオの時代になり、長時間の撮影が可能となると、一本丸々ワンカットという映画も出現。Wikiによれば、アレクサンドル・ソクーロフ監督の「エルミタージュ幻想」が90分ワンカットで作られ、それ以来こうした映画もいくつか出現しているそうです。
さて「ヴィクトリア」は、140分の全編がワンカットで撮影されているということが大きな特徴です。手持ちカメラでシネスコのワイドスクリーンに映し出されるのは、ヴィクトリアという若い女性。140分の間、観客はヴィクトリアと共に衝撃的な一夜を経験します。
予告編では、奔放な女性の破天荒な一夜、かと思いましたが、ごく普通の女の子の青春映画でした。なによりヴィクトリア役のライア・コスタがとても魅力的です。アルバイトしているカフェでいきなりメフィスト・ワルツをピアノで弾くシーンはぐっと来ました。
そして、思わぬことから事件に巻き込まれ、その中で次第に力強さを増していくという姿は感動的でした。通常の映画では、数か月の撮影期間の間に主人公が成長していく姿を作りこんでいくのでしょうが、この映画は、リアルな140分の間に主人公の成長を見せるというわけです。
最近観た映画「淵に立つ」で、カットが変わって8年経ちました、という描写に、映画的なずるさというか、ちょっとした違和感を感じていただけに、映画内時間=リアルタイムという試みに感動すら覚えました。
そして、観終わった後に、どっと疲れを感じたのも事実です。なんだかすごいものを見てしまったというのが率直な感想でした。
http://www.victoria-movie.jp/

0