「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」
2019年(東京テアトル)168分
配給:東京テアトル
監督:片渕須直 原作:こうの史代 脚本:片渕須直 プロデューサー:
真木太郎 企画:丸山正雄 監督補:浦谷千恵 画面構成:浦谷千恵 キャラクターデザイン:松原秀典 作画監督:松原秀典 美術監督:林孝輔
音楽:コトリンゴ アニメーション制作:MAPPA
出演:
のん(北條(浦野)すず)/細谷佳正(北條周作)/尾身美詞(黒村径子)/稲葉菜月(黒村晴美)/小野大輔(水原哲)/潘めぐみ(浦野すみ)/岩井七世(白木リン)/牛山茂(北條円太郎)/新谷真弓(北條サン)/花澤香菜(テル)/澁谷天外/京田尚子(森田イト)/世弥きくよ(堂本さん)/たちばなことね(刈谷さん)/瀬田ひろ美(知多さん)/小山剛志(浦野十郎)/津田真澄(浦野キセノ)
上映館:イオンシネマ新潟西SC8
採点:★★★★☆
さらにいくつものシーンを追加した新バージョンの映画。すずさんの女としての面を描きたいという事のようですが、やはり蛇足だったという評価になってしまいました。
特に要らないと思ったのはすずさんのセックスシーン。このシーンがあることによってこの映画を親子で観るのをためらう人もいるのでは、と危惧します。特にPG12とかにもなっていないのでなおさらです。
映画とは、いかに描くか、よりも、いかに描かないか、が重要なものだと思います。2016年版はあれでひとつの完成型として成立していたので、それにリンという女性のエピソードを膨らませていった結果、すずさんの世界が散漫になってしまったと感じました。
リンがばあちゃんちの座敷わらしで、周作と関わりがあった人で、それにすずが偶然会った、というのは良く映画で用いられる都合のいい偶然ですが、そうやって辻褄をあわせようとすればするほど、作者の描きたいことが散漫になって焦点がぼけていきます。
監督はどうしても、あれもこれも盛り込みたいと考えて、まだ描き足りないことがあると思いがちですが、やはり適当なところで止めておくのも器量のうちです。全部説明しないで、行間を読むのは観客に任せる、てのが良かったのになあ。
そうは言っても、この映画の持っている良さは損なわれてはいません。2016年版を見ていなければ、そんなに粗は目立たないと思います。全然別の作品になった、と言うほどのものではありません。ただ、くどくなった、という程度です。
さて、この作品を見て改めて思ったのは、昭和40年代頃までは、戦前とさほど変わらない世界が有ったなあ、ということです。自分の子供の頃は、さすがに竈でご飯は炊いていなかったけど、風呂は薪で焚いていたし、中学、高校は木造校舎で、床の穴に消しゴムかすを詰めたりしてました。母親は野原の野草を摘んでおかずにしてたり、着物を作り直して子供の服を作ったりしていました。50年くらいで生活は全く変わってしまったのだなあ、と感じる映画でした。
http://ikutsumono-katasumini.jp/

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