「ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方」(The Biggest Little Farm)
2018年 アメリカ(シンカ) 91分 映倫:G
監督:ジョン・チェスター 製作:ジョン・チェスター/サンドラ・キーツ 製作総指揮:ポール・グリナス/ジェシカ・グリナス/ローリー・デビッド/エリカ・メッサー 脚本:ジョン・チェスター/マーク・モンロー 編集:エイミー・オーバーベック 音楽:ジェフ・ビール
出演:(ドキュメンタリー)
ジョン・チェスター/モリー・チェスター
上映館:新潟市民映画館シネ・ウインド
採点:★★★★★
コロナ禍で全国の映画館が休館となっている中、シネ・ウインドがいち早く上映再開にこぎつけました。保健所の指導の元、一回の入場者は前後左右の座席を空席にして最大20名。前日までに予約を受け付け、県内在住の会員に限る。などの対応を取っての再開です。
それでも事情を知らない非会員の観客(大抵ジジイだ)などが現れ、対応は大変です。ともあれ、予告を観て気になっていた本作を鑑賞出来たのは嬉しい限りです。
テレビなどで自然番組を作っているカメラマンのジョンと料理家のモリーは飼い犬の鳴き声のせいでアパートの立ち退きを迫られ、いっそのこと自分たちの理想の農場を作ろうと思い立ちます。
その話に乗って出資者が現れ、200エーカー(80ヘクタール、東京ドーム17個分)の荒廃した農場を経営する事になる、てんですけど、ちょっと話が旨すぎますねえ。まあ、テレビ局が絡んでいるんでしょうけど。
とにかく2人は自然農法のアドバイザーの助言を頼りに、多種多様な植物を植え、動物を飼い、自然のサイクルを徐々に学んで行きます。雑草を家畜が食べ、排泄物によって土が養われ、害虫のアブラムシも天敵のテントウムシがやってきて退治してくれます。
貴重な収入源である玉子の生産に欠かせない鶏を食べてしまう厄介なコヨーテでさえ、畑を荒らすノネズミを退治するというサイクルの貴重な担い手であることがわかります。
自然を人間の都合のよいように作り変えるのではなく、自然にとって人間が果たす役割を考えることによって、化学肥料や農薬に頼らない、いやそれよりももっと堅牢な自然サイクルによる農業が成立する事をこの作品は示しています。
元々わが国の農業は自然サイクルを生かしたものでした。水田は何層にもわたる表土の改良によって最適な微生物の宝庫となっています。そうした水田を一旦耕作放棄地にしてしまうと、元に戻すのには大変な年数がかかってしまいます。
折しも新型コロナウイルスによって我々の都会的な生活は大きな打撃を受けていますが、それは多様な微生物を排除した生活環境がもたらした自然界からの痛恨の一撃なのかも知れません。
今、この時期にこの映画を観られた事に感謝の念を禁じ得ません。もし機会がありましたら、是非鑑賞する事をお勧めいたします。
http://synca.jp/biglittle/

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