「白根大凧合戦ドキュメンタリー 凧の国」
2019年 (SUNNYRAIN) 70分
監督・編集:梨本諦鳴 撮影監督:宮野和真 撮影、遠藤奏/内山竣馬/石田翔太/目崎瀬奈/福原美咲/飯野聡生/大江真世/斉藤真織/佐藤可南子 音楽/長嶌寛幸ナレーション/相良諒
上映館:新潟市民映画館シネ・ウインド
採点:★★☆☆☆
毎年新潟市の白根地区では、毎年6月に川を挟んだ旧味方村と5日間に渡り凧合戦が繰り広げられます。江戸時代から300年に渡り連綿と続けられて来た祭りも今年は新型コロナウイルスの影響で中止となりました。
本作は江戸時代の記録を手がかりとして3年間の取材によって大凧合戦の模様を記録したドキュメンタリーです。私も一度凧合戦は見物したことがありますが、合戦と銘打ってあるとおり、凧を上げるのが目的ではなく、両岸の若者たちが凧の糸を絡ませ、お互いに綱を引き合って相手の綱を切るのが目的です。
驚くことに、ナレーションで読み上げられる江戸時代の記録と寸分違わぬ光景が、現在も行われているということです。監督の着眼点はそこだったとは思います。
ただし、13の組はそれぞれ凧の作り方も異なり、取材が多岐にわたったことから、製作の主眼が分散され、単なる記録で終わってしまったことから、ドキュメンタリーとしては散漫な印象となってしまいました。
ただ漫然とカメラを回していただけではドキュメンタリーにはならない。数多くのテーマから刈り込んでそこに集中する事ではじめてドキュメンタリー足り得るのです。
なので観る側もドキュメンタリーは記録として観てはなりません。監督の視点からのひとつの創作物として観る必要があります。そこには必ず、取捨選択、誇張、作為、と言う物が含まれるのです。
これは新潟市南区と言う行政側からの依頼に基づいて製作された作品のようなので、難しいところです。凧合戦の発祥の裏には、水害に苦しむ河川沿いの民衆の姿があるのです。氾濫を繰り返す河川の両岸は、相手側の堤防が溢れればこちら側が助かるという対立構造があります。川が溢れそうになれば、夜陰に紛れて相手側の堤防を切りに行く、それを待ち構えて殺し合うという間柄。
それが平和的な「合戦」になった姿こそが大凧合戦の真実なのです。ドキュメンタリーとしてはそこに踏み込んで欲しかったなあ。実際に観覧してみると、せっかく苦労して作った畳24畳の大凧(現地では、イカノボリと言うらしい)を苦労して上げては対岸の大凧と綱をからめて川に落とし、骨組みだけの残骸にして綱を引き合う、と言う理解に苦しむような祭りです。
その辺の面白さがうまく伝わりませんでしたね。残念に思います。

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