「レフェリー 知られざるサッカーの舞台裏」(LES ARBITRES/KILL THE REFEREE)
2009 ベルギー カラー・スタンダード 77分
配給:アップリンク
監督:イヴ・イノン/エリック・カルド/デルフィーヌ・ルエルシー 原案:イバン・コルニュ 撮影:ディディエ・ヒル・ディライブ/アントニオ・カプルソ/ヴァンサン・ユフティ
(ドキュメンタリー)
上映館:クロスパルにいがた4階映像ホール
採点:★★★★
「レフェリーを殺せ」という英語題名が示す通り、時にはサッカーの審判は命の危険にさえもさらされる。これはサッカー大会EURO2008のレフェリーたちの素顔を追ったドキュメンタリーの秀作である。中でもこの作品のすごいところは、試合中のレフェリーたちが無線で話している内容がそのまま映されていることである。素晴らしいゴールが実はオフサイドであったことから副審はその後の自信を失ってしまう。それを無線で叱咤する主審。そして審判が試合中に選手と交わす話。「残念だが今のはファウルだ。そして君はイエローだ。」時に厳しく、時には諭すように選手たちとのコミュニケーションを取り合う。そして何事もなく試合が終了したあと、審判たちは抱き合って喜び合う。そんな最中、イングランドのハワード・ウェブがポーランドチームに下したPKの判断をめぐって、ポーランド首相から「殺したい」とのコメントまで出されてしまう。ますます険悪化する審判たち。しかし彼らも家に帰れば妻も子どももある普通の一般人でしかない。審判の妻たちは試合を見ながら無事に終わることを祈っている。そんな赤裸々な姿が余すところ無く描かれているのだ。
最近映像技術の発達にしたがって、審判の誤審は瞬時に判明する。2010年のワールドカップではオフサイドラインまでスタジアムの映像装置に映し出される始末。これでは審判は命がいくらあっても足りないだろう。しかし、この映画の中で審判たちは、「映像は影響されるから見るな」と言う。人間がやっていることだから間違いはあるのがしかたがない。驚くべきことに審判たちはゲーム終了後に選手たちに「あんな判定をしてすまなかった」などと言っている。そう選手は審判がミスを犯すことは承知の上でゲームをしている。当たり前のことである。一方日本ではどうか。とにかくなんでも審判の判定にいちゃもんをつけたがる選手。そして警察官のようにカードをやたらと出す審判。自チームに不利な判定をつけられると審判にブーイングをする観衆。日本では選手と審判の関係はあまり確立されていないように思うのだ。日本でももっと審判がマスコミなどで発言してもいいと思うのだが。

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