2009/1/28

江夏亜希子 「子宮内膜症の治療について;ピル、ミレーナ、ディナゲストなど」  最新医療情報

先日、黄体ホルモン付加子宮内避妊リング「ミレーナ」の使用成績について、11月の「関東連合」という学会で発表させていただいた、という話を書かせていただきましたが、それに続き、先週末の土曜日、1月24日に、「TOKYO Endometriosis Seminar」の、「〜Endometriosis 治療にどのようにディナゲストを活かすか〜」というディスカッションでコメンテーターを担当させていただきました。Endometriosis(エンドメトリオーシス)とは、子宮内膜症のことです。

私の専門は「スポーツ医学」と多くの人に思っていただいているようですが、実は大学院は鳥取大学の「生殖内分泌グループ」でお世話になっていたので、ホルモン(内分泌)が本来の専門分野。特に鳥取大学は子宮内膜症の研究・診療に力を入れているので、そのお陰で子宮内膜症には少なからず思い入れがあります。私は「日本エンドメトリオーシス学会」http://www.endometriosis.gr.jp/ にも所属し、先週(1月17〜18日)は、仙台で行われた同学会の総会・学術集会にも出席してきましたので、このところどうも「子宮内膜症づいている」感じがします。

さて、ディナゲスト(持田製薬)(一般名;ジェノゲスト)は、子宮内膜症の治療薬で、「第4世代プロゲスチン製剤」と呼ばれるものです。
子宮内膜症とは、子宮内膜が、本来あるべき子宮の内腔以外の場所(卵巣や子宮筋層内、その他腹腔内、場合によっては肺や腸壁など)に「飛び火」して、その部位で月経や炎症を引き起こし、強い月経痛と月経量の増加、月経時以外の腹痛・腰痛、不妊など、女性のQOL(生活の質)を著しく低下させる疾患です。
正常月経周期では、月経が始まると卵巣から分泌されるエストロゲン(エストラジオール)が子宮内膜を厚くし、充分に子宮内膜が厚くなると排卵が起こります。その後の卵巣からは、エストロゲンに加えてプロゲステロン(黄体ホルモン)というホルモンが分泌され、厚くなった子宮内膜が「脱落膜化」します。(「脱落膜化」を説明するのは非常に難しいのですが、簡単にいうと「それ以上厚くしないように安定させ、赤ちゃんの居心地のいい状態にキープする」という感じでしょうか?)排卵から2週間待っても月経が来ないときには、いったん卵巣がホルモンを作るのを止めるため、子宮内膜が全部剥がれて月経がきます。
子宮内膜症の組織も、ホルモンを浴びると正常な子宮内膜と同じようにふるまうので、エストロゲンを浴びるとどんどん悪化してしまいます。逆にプロゲステロンには「それ以上子宮内膜が厚くならないようにする」、すなわちエストロゲンの働きを抑制ししているのです。子宮内膜症にとっては「エストロゲンがアクセル、プロゲステロンがブレーキ」のような働きをしているといってもいいでしょう。
ですから、子宮内膜症の治療で一番効果的なのは、「エストロゲンがなくなること」すなわち「閉経すること」ということになります。少し前まで子宮内膜症治療の主流だった「偽閉経療法」は、卵巣からのエストロゲン分泌を完全に止めるので、月経は止まってしまい確かに内膜症は良くなりますが、同時に更年期障害や骨粗鬆症などのリスクがあり、6ヶ月など短期間しか使用できず、中止するとまた元に戻ってしまうということになっていました。
そういう副作用を抑えつつ、子宮内膜症の活動も抑える方法として使われるようになったのが低用量ピル、ミレーナ、ディナゲストということになります。

低用量ピルは、卵巣から作られるエストロゲンとプロゲステロンを少量内服することにより、自身の卵巣からのホルモン分泌を抑えて、結果的に内膜症の活動を抑えるというものです。ただし、その中にエストロゲンも少量含まれているので、自然周期で放置するよりははるかに抑制されますが、場合によっては「アクセルとブレーキを一緒に踏んでいるような状態」にもなりかねず、血栓などの副作用も考えなくてはいけません。

先日書いた「黄体ホルモン付加子宮内避妊リング(ミレーナ)」は、子宮内膜に常にプロゲステロンを浴びせ続けるような状態にするために、月経量を減らし、特に子宮腺筋症(子宮筋層に起こる子宮内膜症)の症状を軽減させるものです。

今回のセミナーのテーマである「ジェノゲスト(商品名;ディナゲスト)」も、同じ黄体ホルモン製剤(内服薬)ですが、「黄体ホルモン活性(内膜増殖抑制効果)」が非常に強く、ピルに使われている黄体ホルモンの10倍くらいの値だそうです。ですから、「子宮内膜症の細胞に直接作用する唯一の薬」とも言われています。さらに、黄体ホルモンには排卵抑制効果もあるので、ジェノゲストを内服していると、排卵が起こらなくなり、エストロゲンの値も低く(決して低すぎない程度)に抑えられるので、更年期障害も起こらず長期に連続して服薬することができます。

理論上、副作用が少なくて子宮内膜症抑制効果が一番強いと期待されるのが黄体ホルモン製剤なのですが、問題点もいくつかあります。
一つ目は、不正出血が持続すること。ミレーナもディナゲストも、完全に月経が止まる人がいる一方、量は減るもののだらだらと不正出血が続いたり、月経のように順調に出血しないので、ずっとナプキンが必要で困る、という方も少なくありません。

もう一つの問題点は、金額が高いこと。
・低用量ピルは、自費でも当院では2100円(税込み)
保険で処方できる「ルナベル」も1錠332.9円 
1か月分(21日内服7日休薬)で、332.9×21=6990.9円 3割負担で2097円
・ミレーナは挿入時に当院では73500円
(ただし5年間有効なので、1か月分にすると1225円)
・ディナゲストは1錠468.4円 1日2錠内服なので、28日分なら
  468.4(円)×2(回)×28(日)=26230.4  3割負担で7869円

子宮内膜症は閉経まで付き合わなければいけない疾患なので、経済的負担も決して無視できない問題ですよね。
当院では、現状、多くの人が低用量ピルを使用しており、ミレーナ、ディナゲストが少しずつ増えている状態です。子宮内膜症の治療法も年々変わってきます。もちろん、妊娠を希望される場合や、卵巣チョコレートのう胞のサイズが増していくとき、腫瘍マーカーが上昇するときなど、手術の必要性についても検討しなくてはなりません。
それぞれの治療法のメリット・デメリットなどと、その人に何が合っているのか、相談して、納得して治療を受けていただけるようお手伝いができれば、と思います。みなさまのお役に立てるように、日々新しい情報にアンテナを立てていきたいと思います。
子宮内膜症でお困りの方、どうぞご相談ください。(産婦人科 江夏亜希子
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